特集02
ソーシャルをビジネスにする。
最先端の取り組みに挑戦するための方法論を学ぶ。
県立広島大学大学院 経営管理研究科
教授 百武ひろ子
教授 露木真也子
コモンズとは共有地、共有資源を意味します。日本にも、伝統的に地域の人々が共同で維持、管理し、その地で生み出される恵みをシェアしてきた里山や漁場などのコモンズがあります。これまでコモンズは、自然資源を指すことが多かったのですが、現在その対象は拡大しています。都市においても、公園や公開空地、道路といった公共空間を共有資源として捉え、行政だけでなくNPOや企業など多様な人々と共にマネジメントすることで地域全体の価値を高めることが試みられています。また、従来の土地に根差したコモンズから「知」や「情報」の共有の場にまでその対象を拡大する動きも生まれています。私たちは、所有者ごとにバラバラにマネジメントされていたものを個々の企業、組織が連携することで全体としての価値を高めることができるものを共有資源:コモンズとして捉え、マネジメントすることを「コモンズマネジメント」と呼んでいます。
複雑な社会的課題はセクターを超えて多様な主体が連携・協働することで解決することが可能となります。そのためには、トップダウンではなく、それぞれに専門性を持つ多様な立場の人の声を聞き、知恵を出し合って答えを見出していくことで、ソリューションを生み出すという新たな方法論が求められています。「地域経営と社会的合意形成」では、異なる立場の人が話しあいながら、新たな価値を見出す手法を学びます。「社会イノベーション」「共生社会の理念と実例」では、生み出されたソリューションが新しい社会システムや価値観として地域に根ざしていく普及過程について、理論と事例から学びます。
多様なステークホルダーが専門性を持ち寄って、一つの未来を目指す一つのソリューションを生み出すためには、業界用語や社内用語を始め、独自の慣習や考え方、上下関係やしがらみといったものを取り払い、個々の自由な発想を尊重する必要があります。異なる価値観に触れることで、これまで実務経験を通して培ってきた専門性が先入観や思い込みかも知れないと疑ってみる機会が訪れます。そこで殻を破る発想ができるかどうかが、社会イノベーション創出への鍵です。互いの価値観を受け入れ合い、刺激し合うことで、自らも仲間も殻を破り、専門的な知識と技術を介して新たなつながりを生み出していく。そんなエンパワメントの場が、HBMSなのです。
コモンズの思想は今後ますます広がっていくと考えられますが、授業として取り入れているビジネススクールはまだ多くはありません。MBAは個人のスキルとして取得する人がほとんどでしたが、HBMSで学ぶ人たちの多くは、自分自身はもちろんのこと、広島のために何かしたいという意欲の高い人ばかりです。ビジネスは利益を追求するもので、ソーシャルとビジネスは相反するものであるものという既存の概念を覆し、事業としてのソーシャル、社会におけるビジネス、を追求するHBMSのコンセプトからすると、東京よりも先にコモンズマネジメントを授業として学ぶことは非常に意義のあることなのです。
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